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2005年12月14日 (水)

好きな『“石”の詩(4)』~久門正雄~

好きな『“石”の詩(4)』
~久門正雄~

 これまでに、すでに紹介している、
作品社の日本の名随筆(88)
『石(奈良本辰也編、1990/2/25発行)』の中で、
私が一番好きなのが、
久門正雄氏の愛石志(抄)である。 
 
 この抄録は、中間の作庭に関する部分である。
原文の前半と後半で、
石の本質や日本人の愛石の全体像を、
やや難解ではあるが、
文学性香気の豊かな表現で、
しかもバランスよく的確にまとめてくれており、
こちらのほうがどちらかというと、
幾度も繰り返し読みたくなる石についての文章なのである。

 これが収められている原本は
「石の鑑賞(昭和二十九年十二月十日発行、理想社)」である。
そして、「石の鑑賞」は、
「石の発見(昭和十九年一月二十五日、宝雲舎)」
の増補改訂版であり、
“発見”では、
前半に築庭と石に関する各論的な数編の作品を置いて、
後半に総論的な愛石志が九十頁分を占めている。
 
 一方、“鑑賞”では、
人と石の不思議な関わり、
石を愛する道、
庭石からの石の発見などが、
全体的な視点で、
文学的にまとめられている
愛石志は冒頭に配置されており、
愛石入門書としても“発見”より、
手にとってわかりやすい。

 「石の鑑賞」、「石の発見」とも、
石に関連する新旧の本の蒐集を始めた初期に、
ある古書店で探し当て、
私の大切な座右の書となっている。
愛石志を超えるような、
石と人間の関係の奥深さについての総合的な文学作品が、
書けるようになりたいものである。
私の今後の大きな目標となっている。
 
  両書の中に、私は、未だ見ていない、
著者の旧著にあたる
『掌上の石』から石の詩が2編収められている。
一つは本の題名になっている“掌上の石”で、
もうひとつが3部構成の長詩“石”である。
今回は、短い前者のみを取り上げ、
いつの日か、長詩“石”も紹介したい。

               掌上の石

         手ごろな石を拾うて
         掌の上に、
                  じいっと支えてみる。
                  ほどよい重さが
                  静かに感じられる。
                  その石を
                  そろりと握り、
                  もそっと強く 握ってみる。
                  おそるべき硬さが
                  身にこたえる。
 
 私は、この詩にならって、
机の上に置いてあるいくつかの石ころを、
ときどき手に取って、
持ち上げ握りしめることがあるが、
他のどのようなものにもない独特の、
重さを感じるとともに、
今ある形になった、長い時の経過や、
いろいろな場所での様々な圧力・困難等に想いをめぐらすと、
生あるものの避けられない孤独が癒される。

 ここで、久門正雄氏の略歴を引用しておきたい。
  日本の名随筆(88)『石』によると、
「1892~1982,歌人・随筆家。
愛媛に生まれ二松学舎で学んだのち、
女子教育に従事。その後歌集『小さい足跡』を上梓。
故郷の愛媛県西条市で、著作活動を続けた。
西条史談会会員、西条市文化財保護委員長等を歴任」  、
また著書『言葉の自然林(方言俚語の詳密研究と日本語原論))
昭和四十九年八月二十五日刊行』に載っている、
著者自身による著作歴は以下の通りである。
 
 「○赤とんぼ(歌集)、○未尽集(先妣に対する哀慕歌集)、
○文法を中心としたる小倉百人一首の解釈、
○頭註花月草紙、○真生(月刊歌誌。廃絶)、
○群鳥(月刊歌誌。廃絶)、○春宵(歌集)、
○掌上の石(詩歌随筆)、○逕(歌集)、
○新居浜市誌語誌編(昭和二十五年市役所舎屋と共に消失)、
○石の発見(嘗て見ざりし文化史的石の見方)、
○高秋田とその画(高秋田に関する唯一の書)、
○伊藤鉄石についての聞書とその作品(伊藤鉄石に関する唯一の書)、
○石の鑑賞
【本の中で紹介した青石のその後についてやや長い説明があるが省略する】、
○日本美(一部分、雑誌へ発表)、
○美しいものの見方【原稿や紙型が消失した経緯紹介省略】、
○小さい足跡(周平に対する哀悼編)、
○国語拾遺語原考【廃棄すべき書で、次の書で完成に近づけたと記す】、
○言葉の自然林
(前出国語拾遺語原考を廃棄にして、増補改修、更に日本語原論加ふ)、
○宿命論【長い説明があるが省略】、
○諸雑誌へ諸小論【長い説明あるが省略】、
○作詞ー校歌・寮歌・社歌等、
○校閲ー薄田泣菫全集散文部・西条市誌【説明省略】、以下略」

 最後に、思いもかけないようなことであったが、
久門氏の子供さんとなる女性との出会いについて記しておきたい。
私が、数年前から、石の随筆シリーズを寄稿している、
ある同人誌的な雑誌で、
私の「『石の来歴』随想」に興味を持ってくださった、
同誌の寄稿家K氏から誘いをうけて、
K氏が別に主催している同人誌的な雑誌に、
私も、ライフワークと考えている
「健康観」についての随想を載せていただくようになって、
しばらくしてから、
その雑誌に時々、
原稿を寄せておられる女性が、
久門氏の子供さんに当たられる方だとの紹介をいただいた。
そして、一度だけ、手紙の交換をさせていただいた。
随分と励みとなった内容の文面であった。
いつか、機会を得て、
久門正雄氏の著書の全貌や蔵書等に
触れさせていただけるようなことが出来たら、
どんなにかよいだろうかとも願っている。

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